〇議長(勅使河原喜夫君) 次に、個人による一般質問を行います。まず、4番議員 茂原正秀 君、ご登壇の上、ご質問願います。4番。 (4番 茂原正秀君登壇)

〇4番(茂原正秀君) 議長のお許しをいただきましたので、さきに通告しました職員の民間派 遣研修についてを質問いたします。 さきの齋藤議員の質問と重なる部分もございますが、ご了承ください。平成19年度から2年 間、10名の市職員が民間企業に派遣され、研修を受けることが決まっております。このことに ついて3点質問いたします。 まず一つ目ですが、この民間派遣研修はどのような目的で行われるのでしょうか。そして、二 つ目は、民間に派遣されている期間、職員の給与などは市が負担すると聞いておりますが、この 民間派遣研修全体ではどの程度の費用がかかるのでしょうか。さらに三つ目ですが、派遣先はど のような方法で決定したのでしょうか。また、具体的な派遣先をお教えください。 以上を壇上からの質問といたします。ご答弁のほどよろしくお願いいたします。

〇議長(勅使河原喜夫君) 市長。 (市長 岩井賢太郎君登壇)

〇市長(岩井賢太郎君) それでは、4番 茂原議員さんの職員の民間派遣研修についてのご質 問にお答えをいたします。 昨今、自治体を取り巻く環境は、人口ピラミッドでの形が崩れ、少子高齢化が急激に進展し、 税収は伸び悩み、財政状況の悪化を招くとともに、地方分権の推進と相まって地方自治体に大き な変身を求められております。このような中、地方公務員も新しい発想を持ち、現代社会の直面 する諸問題を違った角度から認識し、旧態依然とした体制を打破する必要に迫られていると私は 考えております。このような情勢のもと、富岡市においては新しい試みとして2年間という長期 にわたる研修を実施したいとするものであります。 それでは、茂原議員さんの質問に順を追ってお答えをいたします。まず、1点目の民間研修の 目的についてでありますが、冒頭でも若干触れさせていただきましたが、民間企業に職員を派遣 することにより、企業等における合理性やコスト意識を醸成するとともに、社会情勢を行政の立 場ではなく、企業側から見詰め直し、現代社会の直面する諸問題に新たな認識を持つことで、新 しい発想が芽生え、これからの行政運営に必要な幅広い能力が体得できるものと考えております。 次に、2点目の民間派遣にかかる費用についてでありますが、派遣職員は10名ですので、給 与として年間約6,400万円の費用がかかる形になります。しかしながら、21番 齋藤議員 - 136 - さんのご質問でもお答えしましたように、企業側からも応分の負担をいただく予定ですので、そ の部分を差し引きますと、およそ約4,600万円程度と考えております。 最後に、派遣先の決定方法についてお答えをいたします。派遣先につきましては、金融機関を 初め製造業、ゴルフ場、介護施設等であります。先ほどもお話ししましたように、財政窮状の折、 研修をお願いする傍ら、負担金もいただこうという身勝手な形でありますので、好意的にそのよ うな条件をのんでいただける企業を選択したわけであります。 次に、3点目の具体的な派遣先でありますが、かんら信用金庫、シルクカントリー倶楽部、ユ ウエツ精機株式会社、株式会社金沢化成、介護施設で西毛病院、ココン、こまちの7事業所を予 定しております。 以上、壇上からの答弁とさせていただきます。

〇議長(勅使河原喜夫君) 4番。

〇4番(茂原正秀君) ご答弁ありがとうございました。まず、民間派遣にかかる費用につきま しては、10名という人数から年間七、八千万円ぐらいはかかるのかなと私は考えておりました ので、実際の市の負担は4,600万円程度と聞き、安心しました。しかし、民間派遣の目的や 派遣先については疑問に思える点がございますので、ここからはこの点に絞って話を進めたいと 思います。 まず、ご回答の冒頭の部分で、地方公務員も新しい発想を持ち、現代社会の直面する諸問題を 違った角度から認識し、旧態依然とした体制を打破する必要に迫られているというお話がござい ました。全くそのとおりだと私も思います。しかし、実際の派遣先である事業所名を伺ったとこ ろ、疑問を持ちました。確かにどこも大きく事業をされている立派なところばかりであると思い ますが、果たしてこれらの事業所で研修することが、富岡市の今後の行政にどのように役立って いくのか、私には見えてきません。研修とはいえ、市から給与をもらった上で民間企業の仕事を するのですから、その仕事を経験することにより、これからの行政に必要であるか、これまでの 行政では身につけることができなかった能力を得ることができなければ、2年間で1億円近い血 税がむだになってしまうことになるかと思います。 そこで、具体的に再質問いたします。まず、一つ目ですが、派遣先の決定方法についての回答 の中で、好意的にそのような条件をのんでいただける企業を選択したという内容がございました。 このお話を聞きますと、研修の目的は二の次で、引き受けてくれるところならどこでもいいから お願いしたかのような印象を持たざるを得ません。まさか10人もの職員を、大半が市の給与負 担で2年間も研修させるのに、何を学ばせるか具体的な目標を設定しないまま決定したというよ うなことはないとは思いますが、派遣先7事業所、それぞれでの研修の目的をお聞かせください。 そして、二つ目は、今回の派遣先は富岡市近郊の事業所ばかりですが、例えば富岡製糸場の世 界遺産登録を見据えた商業や観光の振興のために、東京の大手広告代理店などに職員を派遣し、 ノウハウの取得だけでなく、今後の人脈づくりなどを進めることができれば、職員の意識をただ 変えるだけでなく、富岡市の行政にとっても大きなメリットが生まれるかと思います。実際にそ のような方法の民間派遣研修に取り組んでいる自治体もありますが、時代の先端を行く、日本を - 137 - 代表するような民間企業から、積極的に情報や知識を取り入れることを目的とするような民間派 遣を、なぜ富岡市では行わないのでしょうか。 そして、最後の3番目ですけれども、民間の活力や発想を行政に取り入れる別の方法として、 民間企業でのキャリアを持つ者を職員として採用することが考えられます。以前静岡県の稲取温 泉観光協会が事務局長を公募しましたところ、全国から多数の応募があり、大きくマスコミでも 取り上げられました。このような方法を富岡市でも行い、例えば日本を代表するような企業で活 躍し、定年退職したばかりのような方々を、1年、2年の契約で数名採用し、民間活力の導入を 進めるような試みを行えば、役所の非効率な部分を改善するだけでなく、恐らくマスコミでも取 り上げられるでしょうから、富岡市にとって大きな宣伝効果も生まれるかと思います。職員の民 間派遣とは異なるタイプのものですが、このようなアイデアを市長はどのようにお考えでしょう か。 以上を第2質問といたします。よろしくお願いいたします。

〇議長(勅使河原喜夫君) 市長。

〇市長(岩井賢太郎君) 茂原議員さんの再質問にお答えいたします。 私は、本年の仕事始めに、職員に対し平成19年度の方針を示しました。その中で、「いらっ しゃいませ」、「ありがとうございました」、「ご苦労さまでした」等のあいさつの励行を、ま た職員の積極性を促すため、「率先垂範の励行」を初め、財政状況が厳しい折、職員が一丸とな って「もったいない」精神を発揮し、徹底的にむだを省くことをお伝えしたところであります。 また、市役所もサービス機関の一環であり、職員一人一人がそのような認識を持って取り組んで ほしい旨いろいろな機会に伝えてまいりました。今回民間派遣研修を実施いたしますのも、この ような精神を民間企業の中から学んでいただいてほしいという考えに基づくものであります。民 間派遣といっても、あくまでこれは職員研修でございますので、その目的とするところは職員資 質の向上はもとより、人間形成に尽きます。それらを踏まえて順を追って質問にお答えいたしま す。 まず、1点目の研修の目的でございますが、これは先ほども申し上げましたとおり、「職員の 人間形成」が最大の目的であります。派遣先はそれぞれでありますが、福祉施設におきましては、 高齢社会に向けた現代日本の社会実情を認識するとともに、福祉のシステムを認識し、製造業に おきましては、コスト意識に基づく企業の合理性を学び、サービス産業におきましては、お客様 を満足させるスキルを磨くとともに、実践的な接遇を体得し、職員の接遇を外から確認できたら と考えるものであります。 いずれにいたしましても、税金を原資として事業を行う公務員と違い、みずからの努力により、 より高い利潤を追求する民間企業のシステムや民間企業の厳しさを直接体験し、納税者の立場か ら富岡市役所を見詰め直す機会になれば大きな収穫が得られるとともに、富岡市から全国に発信 できる大きな改革が敢行できるものと確信いたしております。 次に、2点目の時代の先端を行く日本を代表するような企業への派遣を考えないのかについて お答えいたします。民間派遣の目的は、先ほどから申し上げましたとおり人間形成と考えており - 138 - ます。議員さんもご案内のとおり、地元にもすばらしい企業がたくさんございます。今回の派遣 先も時代の先端を行く企業の一つと考えておりますし、よって、まずは納税者である地元の企業 に受け入れをお願いし、その成果を確認したいと考えているからであります。きっと1年後、2 年後には、日本を代表するような企業へ派遣したのと同じ、遜色のない成果が得られるものと思 っております。 また、富岡製糸場の世界遺産登録を見据えた商業・観光の振興のためのノウハウの取得や人脈 の形成という観点からの派遣についてでございますが、これも初めての試みといたしまして、群 馬県東京事務所の群馬観光プラザへの派遣も来年度予定しております。それにより世界遺産登録 に向けての富岡市の意気込みが表明できるとともに、国との太いパイプが敷設できるのではない かと考えております。 続いて、3点目の民間企業でのキャリアを持つ職員の受け入れの件についてお答えをいたしま す。昨今全国の自治体や学校等におきまして、民間活力の導入が取りざたされており、それなり の成果が上がっている事例も聞き及んでおります。富岡市におきましても民間派遣研修と同様、 このような選択肢も当然考えるところでありますが、この件については、今後もろもろの事例を 研究する中で十分検討してまいりたいと考えております。 以上、再質問の答弁とさせていただきます。

〇議長(勅使河原喜夫君) 4番。

〇4番(茂原正秀君) ご答弁ありがとうございました。先ほどのお話の中に、「いらっしゃい ませ」、「ありがとうございました」などのあいさつの励行という部分がございましたが、あい さつの励行は大変結構なことであると私も思います。しかし、市役所が一般の小売業やサービス 業の接客のように、さまざまな手続に来られた市民の方に対し、「ありがとうございました」と 言うことには、私は少々違和感を持っております。市役所は営利目的の事業所ではないのですか ら、民間業者のような丁寧な対応は当然必要でしょうが、表現は「ご苦労さまでした」などの別 のものがよいのではないかなと感じております。余りこの点に触れますと、話の焦点がずれてし まいますので、ここからはまた本題に入ります。 まず、研修の目的について、人間形成が最大の目的という部分がございました。この点にも少々 違和感を持っておりますが、民間の精神を学ぶとか、人間形成というような内容が、そういうも のが大きな目的で、市民の方々が納めた税金から給与をいただく職員が民間企業に派遣され、研 修とはいえ、その会社の営利事業に取り組むのは、私は少々おかしいのではないかと考えます。 民間派遣でも、例えば市の広報を作成している、担当している職員が、広報を作成するのに必要 な技術や情報を得るために、それを教えていただけるような、そういうノウハウを持っている企 業へ行くのでしたら、それは後に身につけた技術を使って、よりレベルの高い広報をつくったり、 それまで業者に外注していた作業を職員の手で行うことができれば、コストを下げることにもつ ながるでしょうから、このような具体的な目的やメリットがある民間派遣研修なら、行う価値は 十分にあると思います。しかし、今回の民間派遣は、福祉施設では福祉のシステムを認識する、 製造業ではコスト意識に基づく合理性を学ぶなどの説明がございましたが、では具体的に何を学 - 139 - び、それを後にどのような形で、行政の中の仕事で生かすのかがちょっとないように、ここまで のお話では感じます。 さらに、派遣される職員は30代、40代とお聞きしておりますが、これまでのキゃリアを生 かして、これから第一線で役所の仕事を行うべき、そういう方々を2年間10人も出すという点 も懸念されます。中心になるべき10人の人間が2年間もいなくなることで、行政の運営は果た して大丈夫なのか、支障はないのかを考えますと、そこまでしてこの民間派遣は行うべき事業な のだろうかと疑問に思います。 また、現在の厳しい財政状況という面から考えても同様です。民間の精神を学ぶとか、人間形 成という、後に効果をはかることが非常に難しいようなあいまいな目的のために、2年間で1億 円近い費用をかけることが、今の財政状況の中で果たしてすべきことなのか、極めて厳しい財政 にもかかわらず、このような事業がどんどん決まって進められていこうとすることにこそ、富岡 市のコスト意識の欠如や、県内12市の中で一番悪い経常収支比率を生んだ体質が潜んでいるよ うに私には思えてなりません。少々厳しい表現になってしまいましたが、以上の点を踏まえた上 で再々質問いたします。 まず、一つ目ですが、極めて厳しい財政状況のために補助金の見直しや人件費のカットなどの 行政改革を進めている中、職員の人間形成を最大の目標とする民間派遣を、このような大きな規 模で行うことに対し、私は疑問と懸念を抱いておりますが、財政事情には目をつぶっても職員の 人間形成を優先して行わなければならない理由とは、どのようなものなのでしょうか。 そして、二つ目ですが、2年後民間の精神を十分に学び、人間形成も終えた10名の職員が役 所に戻ってから、その10名の職員が他の職員に対して民間の精神を指導するのでしたら、最初 から民間の精神を十分に身につけている方に来ていただき、指導してもらった方が、早く指導も できますし、低い費用でできるかと思いますが、そのような方法では問題なのでしょうか。 また、もしも2年後には継続して、別の職員を再度民間に派遣をしていく予定がおありのよう でしたら、その後の方針もお聞かせください。 以上、第3質問といたします。よろしくお願いいたします。

〇議長(勅使河原喜夫君) 市長。

〇市長(岩井賢太郎君) 茂原議員さんの再々質問にお答えいたします。 先ほどから答弁内容につきまして、私の考え方が十分にご理解いただけないのは甚だ残念であ ります。さて、平成12年4月に地方分権一括法が施行され、機関委任事務制度の廃止と事務事 業の再編成が行われ、適切な役割分担により、国と地方の関係は従来の主従の関係から、対等協 力の関係へと変化をし、これからの地方自治体は与えらた資源を有効に活用し、独自で適切な施 策を展開する能力を持つ必要に迫られていることはご承知のとおりです。今後も地方自治体には もろもろの権限が移譲され、おのおのの自治体がみずからの考えでユニークな政策を形成し、そ れらを実施するに当たって、何よりもまして必要になってくるのが優秀な人材であり、またその 育成にあると考えております。職員の人間形成はもとより、新しい時代の流れに沿った職員の意 識改革がより重要であると考え、今回の民間派遣研修に至ったわけであります。現在市におきま - 140 - しても、この人材育成、また人間形成のために数々の教育や研修を実施しているところでありま す。 しかしながら、この人材育成は一朝一夕にしてかなわないのが現実であります。いろいろな研 修等を実施するに当たっても、即その効果が目に見える形であらわれてくるわけではありません。 今回の民間派遣研修の収穫や効果があらわれてくるのも、ある程度の時期を要するものと考えて おります。 そこで、ご指摘の財政窮乏の折、人間形成にかかわる派遣研修をなぜ優先するのかについてお 答えをいたします。かねがね申し上げましたとおり、人間形成、職員の意識改革等の重要性につ きましては、十分ご理解をいただけたものと思います。現在市におきましては、行政改革の真っ ただ中であり、職員数も平成22年4月1日を目途に13%の削減を目指しております。このよ うな情勢の中で先を展望すると、少数の職員で最大の効果が上がる体制を早急に構築する必要に 迫られております。今回の派遣研修も、現在のぎりぎりの職員数の中から派遣者を選出するもの で、別枠で派遣するわけではありません。窮状を踏まえての派遣であり、先ほど申し上げました 事情を勘案する中で対応するものでございます。よって、各職場における職員一人一人の負担は 当然増してくるものと考えますが、将来の体制を先取りした形を考えているからであります。 次に、2年後にも継続して派遣研修を実施するのかということですが、こちらは21番 齋藤 議員さんのご質問の中でもお答えいたしましたように、最終的に職員の1割程度が民間派遣を経 験できるような形を考えておりますので、よろしくお願いを申し上げます。 また、民間派遣経験者が研修終了後の職員の指導に当たる方法及び民間の精神を踏まえた方か らの指導を仰ぐという方法につきましては、あくまでも職員にみずから民間の環境に身を置き、 民間の精神、考え方を身をもって体験させたいものであり、間接的な指導については現時点では 考えておりませんので、よろしくご理解をいただきたいと思います。 以上、よろしくご理解のほどをお願い申し上げまして、答弁といたします。ありがとうござい ました。