◎ 日程第4一般質問
○議長(齋藤昌平君) 日程第4、これより一般質問を行います。一般質問は、会議規則第50条第3項の規定により、議長の定めた順序によりこれを許します。はじめに、6番議員 茂原正秀君、ご登壇、ご質問願います。6番。
(6番 茂原正秀君登壇)
○6番(茂原正秀君) 議長のお許しをいただきましたので、先に通告しました、小学生の基礎学力養成と高齢者の健康維持を目的とした「計算」「音読」などの学習方法の利用・導入について質問させていただきます。
 数年前、いわゆる「ゆとり教育」と呼ばれる新しい学習内容が小学校に導入されてから、子どもたちの学力低下が懸念されるようになりましたが、今やこの教育問題は、日本の将来に大きな影響を及ぼす可能性が高い社会問題の様相を呈するようになってきました。そのような中、多くのマスコミでも取り上げられた、ある学習方法が、現在大きな注目を浴びております。それは、読み書き・計算の徹底反復により、基礎学力を向上させるという学習方法ですが、最初にこの方法に取り組んだ陰山先生のお名前と、子どもたちの学力向上に大きく貢献したといわれる「百ます計算」は、今では学校関係者だけでなく、全国の保護者の間でも広く知られるようになり、大きな関心を集めております。
 もう少し詳しく説明いたしますと、陰山先生は、昨年の4月から広島県尾道市の土堂小学校の校長先生をされていますが、その前は、兵庫県の山間部にある山口小学校で教べんをとられていました。その山口小学校におきまして、時間を計って簡単な計算問題をさせるという「百ます計算」など、新たな指導方法を取り入れながら、基礎・基本学習の徹底を実践することで、児童らの成績を飛躍的に伸ばしたそうですが、さらにその後、山口小学校の卒業生が大学入試を迎えたとき、次々と難関大学に合格したことから、陰山先生の指導方法は一躍全国的に注目されるようになったわけでございます。現在でも陰山先生は、尾道市の土堂小学校で校長という立場から、同様な指導、学習方法を実践されています。先日、尾道市の教育委員会学校教育課にお話をうかがったところでは、まだ1年間という期間ではあるものの、この新たな方法を導入したことにより、大きなメリットがあったそうでございます。その最も大きな点は、子ども達の集中力が飛躍的に高まったことで、この陰山先生の指導方法は、保護者にも大変好評であるとのことでした。さらにこれを裏付ける具体的なデータとしましては、地域学校評議会が行ったアンケートにおいても、土堂小学校の8割程の保護者が、とても満足と回答しているそうでございます。
 以上の点を踏まえた上で、質問いたします。この陰山先生の行っている方法は、大きく分けますと、まず1つ目には、簡単な計算を繰り返してより速く出来ることを目指す「百ます計算」、2つ目に「音読」、さらに3つ目が、学年の最初のひと月で漢字だけ先にマスターさせるという「漢字の一ヶ月習得」の3つになるそうですが、こうしたある意味では極めてシンプルとも思える学習方法の効果について、富岡市としましてはどのようにお考えなのでしょうか。
 また、多くのマスメディアで報道されていることなどからも、単なる一過性のブームという次元を超えた新しい方法として、富岡市でも強い関心をお持ちの保護者の方も少なくないかと思われますが、今後この指導・学習方法を市内の小学校で導入していくお考えはあるのでしょうか。
 続きまして、高齢者の健康維持関連について質問いたします。
 現在、仙台市では平成15年から17年までの3年間という期間、東北大学の川島先生との共同研究という形態で「脳ウェルネスプロジェクト」という新たな取り組みを行っております。これは、痴呆が始まる原因があるとされている、おでこの所にある脳の前頭前野と呼ばれている部分を、1日10分ほどの「計算」や「音読」をする事で活性化させ、痴呆を予防させることにつなげようとする学習療法でございます。具体的な内容を申し上げますと、計算問題は小学校1年生から4年生のレベルだそうです。また、音読に使うものも簡単なもので、こちらも小学校の国語程度の内容とのことです。実際に、仙台市内の老人施設でこのような学習療法を行ったところ、まだ1年ほどの結果ですが、痴呆の方には脳機能の改善効果が確認され、また健常者の方には、痴呆の予防につながるとのデータが出ているそうでございます。科学的に効果が証明されている痴呆症の治療法や予防法は、まだ1つも確立されていないのが現状のようですが、この学習療法はそうした状況を大きく変える可能性を秘めているかとも思えます。
 また、この試みは、実施するにも特別な施設も大きなコストも不要で、さらには、介護保険における市の負担など、老人医療費の今後の増加を抑制することにつながれば、市の財政面からも大きなメリットがあると考えられます。
 以上の点をご理解していただいた上で、質問いたします。今後、高齢化社会が一層進む中、高齢者の方の充実した生活、クオリティ・オブ・ライフという観点からも、また、増大する医療や福祉のコスト対策という面からも、この計算や音読を利用した学習療法は、富岡市でも取り組んでみる価値があるのではないかと私は感じておりますが、どのようにお考えでしょうか。
 以上、壇上からの質問とさせていただきます。ご答弁の程、どうぞよろしくお願いいたします。
○議長(齋藤昌平君) 市長。
(市長 今井清二郎君登壇)
○市長(今井清二郎君) 6番 茂原議員さんの、小学生の基礎学力養成と高齢者の健康維持を目的とした「計算」「音読」などの学習方法の利用・導入について、とのご質問に順を追ってお答えをさせていただきます。
 平成15年10月に、中央教育審議会から、初等中等教育における当面の教育課程及び指導の充実・改善方策についての答申が出されました。本答申におきましては、子どもたちに基礎・基本を徹底し、「生きる力」を育むことを基本的なねらいとする学習指導要領の更なる定着を推進することを求めております。その中で、とりわけ「生きる力」の知の側面である「確かな学力」を育てる必要があることが強調されております。昔から学習の基礎・基本は、読み・書き・そろばんと言われているように、時代が変わってもこのことは不易のものであると思います。文部科学省は、学力の基礎・基本を「確かな学力」と表現した上で、読み・書き・そろばんに代表される知識・理解、技能の他にも、幾つかの観点を明示しております。21世紀を担う子どもたちが、自らの夢や希望を実現するために、学校は、基礎・基本となる「確かな学力」を確実に身に付けさせると共に、自己理解・自己実現を図るための指導・支援を意図的・計画的に行うことが肝要であります。
 最初のご質問の、小学校の基礎学力養成につきましては、教育に関する内容でございますので、教育長から答弁をさせていただきます。
 次に、高齢者の健康維持関連についてのご質問にお答えを申し上げます。
 現在我が国の高齢化は、みぞうの速度で進んでおり、少子高齢社会に突入すると言われております。65歳以上人口の割合、つまり高齢化率は、平成12年に17.3%、さらに平成22年には20%、平成47年頃には30%を超えると予想されており、21世紀の半ばには、3人に1人が65歳以上の高齢者という時代を迎えようとしております。富岡市におきましても、平成2年の高齢化率は14.2%であった率が、平成16年4月1日現在では21.9%に上昇し、国や群馬県を上回るペースで高齢化が進んでおり、市民の5人に1人が高齢者という高齢社会が現実となってまいりました。
 このような超高齢社会を目前にして、高齢者が可能な限りの健康を維持していくことは、高齢者個人だけではなく、社会全体にとっても極めて重要な課題であり、本市では、総合的かつ計画的に、高齢者の健康増進施策を推進するため、平成15年度から平成19年度までの5か年を計画期間とする、富岡市高齢者保健福祉計画及び介護保険事業計画を策定し、高齢者の保健・福祉施策の推進に努めているところでございます。そこで、茂原議員さんのご質問の中で、仙台市が現在取り組まれております、脳ウェルネスプロジェクトのご紹介がありましたが、私もこの取り組みに対しては、強い関心を抱いております。川島隆太先生は、東北大学未来科学技術共同研究センターの教授をなさっておりまして、痴呆症の治療に道をひらく、脳のリハビリ法を開発した領域では、第一人者でございます。このリハビリ法は、特別な機器を一切使わず、声を出して文章を読む「音読」と、簡単な算数の計算を毎日短時間行うだけで、脳の機能が回復することを発見したのでございます。痴呆症と診断された人の脳機能に、回復が見られたことを科学的に証明した報告は世界的にもほとんどなく、その壁を破った画期的な成果であるといわれております。
 川島先生が、社会技術推進事業の一環として、痴呆症の高齢者を対象に「音読」と「計算」の学習を始めたのは約2年前、福岡県の大川市にある、介護老人福祉施設及び特別養護老人ホームに入所の方々、44人を対象にいたしました。学習は、週5日、毎日「音読」と「計算」をドリルを使って、それぞれ10分間づつ6か月間続けるという方法で行われ、科学的・定量的な結果を得ました。44人全員が、自分で排便・排尿が出来ない状態でありましたが、1カ月の学習で20%ほどの人たちが自分で出来るようになっております。さらに、学習前は欲求を伝える会話しか出来なかったのが、日常生活に必要な会話がほぼ出来るまでになった人もいるとのことでございます。この成果に、宮城県仙台市が大きな関心を寄せ、仙台市と川島先生の手で、その名も脳ウェルネスプロジェクトが平成15年度からスタートし、平成17年度までの3か年計画で実施しているものでございます。
 現在、このようなプロジェクトを計画しております自治体は、仙台市のほかにも岐阜県で同じようなプロジェクトを計画しているようでございます。富岡市でもこの計画に類似した取組を、富岡市在宅介護支援センターが中心となって行っておりますので、若干ご説明をさせていただきます。
 富岡市在宅介護支援センターでは、介護保険と表裏一体の介護予防に着目し、平成13年8月に痴呆予防で活躍している、静岡県在住の増田未知子先生が主催しております「介護予防に関する研修」を受講し、同年11月から地区公民館単位で痴呆予防教室を展開しております。この痴呆予防教室は、手作りのお手玉、輪切りの竹太鼓、トランプ、パズル等の道具を用いて、脳をいきいきさせるとともに、明るく楽しい生活が過ごせるよう、脳の機能を上昇させることを目標に開催され、毎回大勢の参加者があり、効果を上げているとの報告を受けているところでございます。また、今年度の今後の予定といたしましては、6月16日に「歌って、奏でて、音楽療法」と題して、最近話題となっております、音楽療法の公開講座の開催を予定しておりますし、7月20日からは市内の「いきいきサロン」を活用して、高齢者が自ら住む、身近な環境の中で痴呆予防や転倒予防等の介護予防活動を通して、高齢者の生きがいづくりや、社会参加を促進し、健康でいきいきとした生活を送ることを目的とした「いきいき健康教室」の開催等を実施すべく、準備を行っているところでございます。
 そこで、ご質問の、富岡市でも取り組んでみる価値があるのではないかと私は感じておりますが、どのように考えているのかとのことでございますが、私もご質問の趣旨はまさにこれからの高齢化社会において莫大な費用が必要となる時、介護予防の重要性という観点から、本市においてこれに取り組んでみる価値の必要性を認識しているところでございます。この計画は特別な施設もコストも不要であり、かつ老人医療費や介護保険の費用負担の増加抑制にもつながることから、ただ今ご説明申し上げました痴呆予防教室の中で、メニューの一つとして実施してまいりたいと考えております。
 また、市内の介護老人福祉施設や介護老人保健施設に入所している人たちに対しましても、今後、施設のご理解、ご協力をいただきながら、これらの介護予防教室が実施できる状況が整い次第、展開してまいりたいと考えておりますので、よろしくお願いいたします。
 なお、川島隆太先生におかれましては、来年1月22日に、富岡市生涯学習センターで開催いたします「あったか健康フェアー」の記念講演で、講師としてお願いしております。演題は「自分の脳を自分で育てる!)キレない子供を育てる。ボケない脳を作る。!)」と題して、ご講演をいただけることになっておりますことを申し添えまして、壇上からの答弁とさせていただきます。
○議長(齋藤昌平君) 教育長。
○教育長(岩井榮壽君) 命によりまして、茂原議員さんの、小学生の基礎学力養成を目的とした「計算」「音読」などの学習方法の利用・導入についてのご質問にお答えいたします。
 現行の学習指導要領においては、ゆとりの中で基礎・基本を確実に身に付け、それをもとに自分で課題を見つけ、自ら学び、自ら考え、主体的に判断し行動できる児童生徒を育成することを、基本的なねらいとしております。そのねらいが確実に実現されるよう、各学校におきましては、日々努力を重ねているところでありますが、茂原議員さんのご指摘のとおり、授業時数や教育内容が削減されたことで、児童生徒の学力が低下するのではないかという懸念が、社会の各方面から寄せられていることも事実であります。そのような懸念を払拭できるよう、各学校では児童生徒に基礎・基本を確実に身に付けられるように、指導内容や方法を工夫改善することが、喫緊の課題であり、保護者や地域社会から信頼される学校となるよう努めているところでございます。
 この点を踏まえながら、まず1点目の百ます計算や音読、漢字の1ヶ月習得等の学習方法の効果についてどのように考えているか、とのご質問にお答えいたします。
 陰山英男氏は兵庫県内の小学校長として、基礎学力の定着を強く唱え、百ます計算や漢字1ヶ月習得など、陰山メソッドとして徹底反復学習で現在大きな話題を集めているのは、議員さんのご指摘のとおりでございます。陰山氏の著書の一つである「本当の学力をつける本」の中においては、自らの教諭時代の実践をもとに「読み、書き、計算」の徹底した反復練習で、児童生徒の学力が驚異的に伸びると主張されております。
 例えば、時間を計って大量の計算問題を行わせ、児童生徒に時間短縮を競い合わせると、はじめは嫌がっていた児童生徒も、自分の計算技能の上達に勇気づけられて、積極的な取り組みになること「読み、書き、計算」は知能指数を向上させ、子どもたちを落ち着かせること。更に、このようにして基礎学力を向上させると授業にゆとりができるので、総合的な学習にも取り組めること、などでございます。これらの主張は陰山氏の実践に基づいたものであり、説得力があり十分検討されてしかるべきものであると考えております。
 現在、各学校におきましては、児童生徒に「生きる力」を身に付けさせることをねらいに、教育活動を進めております。議員さんもご承知のとおり「生きる力」は「確かな学力」「豊かな人間性」「健康・体力」という3つの側面の総体としてとらえられており、この3つの側面をバランス良くはぐくんでいくことが、児童生徒にとって大切であります。
 「生きる力」の知の側面が「確かな学力」にあたりますが、文部科学省は「確かな学力」を、「学ぶ意欲」「思考力」「判断力」「表現力」「知識・理解・技能」「学び方」「課題発見能力」「問題解決能力」と、6つの資質と2つの能力から構成されていると、定義しております。すなわち、学力はこの8つの資質・能力の総体としてとらえられており、この8つの資質・能力をまんべんなく育てていくことが、現在の学校教育で求められているところであります。「生きる力」の知の側面である「確かな学力」を育てていくために、本市におきましてもきめ細かな、個に応じた指導を推進しているところであります。各学校におきましては、それぞれの児童生徒が基礎・基本を確実に身に付けられるように、一人一人の学習状況に応じて、発展的な学習や補充的な学習を取り入れており、必要に応じて、ドリル学習やくり返し学習なども行っております。特に、「確かな学力」の中の1つである「技能」を高めていくためには、反復練習は不可欠であり、その点は、陰山氏の提唱している「百ます計算」「音読」「漢字の一ヶ月習得」などは、有効な学習方法の1つであると考えられます。
 市内の小学校におきましては、9校中7校17学級が「百ます計算」やそれに類する教師自作のドリル学習を取り入れており、授業の導入時や朝学習の時間等を使って、計算技能の向上に努め、学習効果を上げていると聞いております。
 次に、2点目の今後この指導・学習方法を市内の小学校で導入していくお考えはあるのか、とのご質問にお答えいたします。
 教育課程の編成は教育課程に関する法令に従い、各学校が地域や学校及び児童生徒の実態に応じて行うものであり、教育内容、方法、教材の選定は、各学校が独自に行うことと定められております。したがって、ある特定の指導や学習方法を、教育委員会が定めることはできませんが、それぞれの学習方法のよさや価値を学校へ伝えていくことは、教育委員会の行うべき事と考えております。
 現在、本市におきましては、「確かな学力」を育てる授業づくりを目指して、きめ細かな指導の推進を行っております。授業で「知識・理解」「技能」のみならず「学ぶ意欲」「思考力」「判断力」「表現力」のほかに、「課題発見能力」「問題解決能力」「学び方」といった資質能力をバランス良く育てることを各学校にお願いしているところであり、そのためには、児童生徒の知的好奇心を高め、学ぶ楽しさを味わえるようにするとともに、習熟の程度に応じた指導をはじめとする、個に応じた指導を充実することができるように、指導・啓発の努力をしているところでございます。
 今までの指導や評価は、ともすると一斉指導中心の授業や結果重視の評価など、「知識・理解」「技能」を重視する傾向がございました。そこで、学校訪問等を通じて、体験的・問題解決的な学習を積極的に取り入れること、習熟の程度に応じた指導の質的な向上を目指すこと、指導と評価の一体化を図った授業の充実を図ることなどに重点を置き、授業改善をしていくよう、各小中学校に働きかけておるところでございます。
 今後も、「確かな学力」を育むために、常に6つの資質と2つの能力を意識して授業にのぞみ、問題解決的な学習や体験的な学習、反復練習等を児童生徒の実態に応じてバランス良く取り入れ、「確かな学力」を育てていくよう努力してまいりたいと考えております。その点を踏まえながら、陰山氏が提唱している反復練習も、その良さを見極めながら、児童生徒の実態に応じて積極的に各学校で活用していくことは良いことであると考えております。
 陰山氏の著書である『「陰山学級」学力向上物語』には、次のような一文が書かれております。「百ます計算」をすれば伸びるといったように、メソッドが、子どもを伸ばすと誤解している方が親御さんの中にもいるということです。山口小学校の子どもたちが伸びたのはメソッドのおかげではありませんし、私の力というわけでもありません。もともと子どもたちは伸びる力を持っていて、それを家庭、地域、学校の三者が協力してサポートしていったから、彼らは伸びたのです。中略しまして、「読み、書き、計算」はとても大切ですが、私はそれだけを重視しているつもりはありません。学力だけでなく、体力も心も伸びてほしいと願っているのです。
 本県は「子どもを育てるなら群馬県」というチャッチフレーズを掲げておりますが、子どもたち一人一人に「確かな学力」を確実に身に付けさせるために、学校の役割を認識し、指導内容や方法を工夫・改善することが喫緊の課題であります。流行だけでなく教育の本質を認識し、教育的価値を見極めた上で、良い点を積極的に取り入れていくとともに、更なる授業の工夫・改善に努めていきたいと考えておりますので、ご理解の程よろしくお願い申し上げまして、答弁とさせていただきます。
◎ 休  憩
     午前10時57分休憩
○議長(齋藤昌平君) 暫時、休憩いたします。
◎ 再  開
     午前11時07分再開
○議長(齋藤昌平君) 再開いたします。
◎ 続・一般質問
○議長(齋藤昌平君) 休憩前に引き続き一般質問を行います。6番。
○6番(茂原正秀君) まずは小学生の基礎学力養成を目指した「計算」「音読」の利用・導入についてですが、明快なご答弁をいただきましてありがとうございました。
 この陰山先生の指導方法ですが、私も陰山先生の書かれた本だけでなく、これまでテレビで取り上げましたドキュメンタリー番組やインターネットで検索して出てきました新聞社の情報など、様々なものを取り寄せ、自分なりに研究してみました。その中で一番インパクトが大きかった点は、基礎基本重視の教育を小学校時代に受けた子どもたちの大学入試での結果でございました。
 兵庫県の人口約7,000人の小さな町で、以前は学力レベルが高くないと言われていた地域の小学校であったにもかかわらず、この「読み書き計算」の反復練習を実践した最初の卒業生50名の中から、神戸大学医学部2名、東北大学医学部、名古屋大学医学部、京都府立医大、大阪大学理学部、北海道大学農学部など、超難関大学の合格者が続出したということでございます。受験生を抱えているご家庭、また以前抱えていたご家庭でしたら耳を疑いたくなるような信じられない話かと思われますが、この驚くべき実績がNHKの情報番組である「クローズアップ現代」や、様々な新聞で取り上げられたことから、陰山メソッドと呼ばれるこの指導方法は、一躍全国から注目されるようになったようでございます。
 しかし、こうした一つの指導方法が脚光を浴びますと、それに対する反対の意見というものが出てくるのはこの世の常でございます。実際、学校の先生方が教室での試みを発表する教育研究全国集会でも、百ます計算は計算の苦手な子も自信がつくと評価する声もある一方、計算の意味を考えなくなると批判する意見もあり、反応は分かれていたそうでございます。このようなことがありましたので、百ます計算や音読の効果について、富岡市の教育委員会としては、どのようなスタンスでお考えなのか、先程質問させていただいた訳でございます。
 ご回答では「確かな学力」の中の一つである「技能」を高めていくためには反復練習は不可欠であり、その点では陰山氏の提唱している方法は有効であるという、教育委員会の考え方、更には、市内の小学校9校中、既に7校の17学級で「百ます計算」やそれに類する教師自作のドリル学習を取り入れており、学習効果を上げているという具体的な例を説明していただきましたが、この点について、もう少しお尋ねしたいと思います。
 先程のご答弁の中で、ある特定の指導や学習方法を教育委員会が定めることはできませんが、それぞれの学習方法の良さや価値を学校に伝えていくことは教育委員会の行うべきことと考えている、とのお話がございましたが、市内9小学校の7校17学級において、担任の先生方が、一人一人の自らのご判断で「百ます計算」やそれに類する学習を取り入れている現状を考えれば、教育委員会が実践している先生方の横のつながりを作ることや、より効果を上げるための情報交換や研究ができるような機会を築くことも、富岡市の子どもたちの学力向上には大きなメリットがあるのではないかと私は思いますが、教育委員会としてはどのようにお考えでしょうか。
 また、ここからは市長にお伺いいたします。今回取り上げました陰山先生の指導法は、教育関係者だけでなく、一般市民からも幅広く注目されておりますように、今や教育は国民の最大関心事と言えるかと思います。そして、この教育の分野で独自性あふれるプランを打ち出すことにより、魅力的な自治体づくりを進めようとする傾向が、近くの英語教育特区の太田市をはじめ、全国で見受けられます。特色ある教育を行うことで他の自治体との違いをアピールし、差別化を図り、自らの自治体の魅力や競争力を高める。その結果、定住人口が増え経済も拡大し、自治体も発展する。このような民間企業で行っている顧客重視のマーケティング戦略的な発想も、これから自治体は持つべきであり、まもなく訪れる人口減社会での自治体間競争では、この教育というものが勝敗を左右する重要な要素であると私は考えております。この点について、市長はどのようなお考えをお持ちでしょうか。
 続きまして、高齢者の健康維持関連についてでございますが、大変分かりやすいご回答をいただきまして、ありがとうございました。この東北大学教授でございます川島先生の研究が注目されるようになりましたのは、最近でございます。ですから、正直なところ富岡市としてはまだ具体的なお考えを持たれていないのではないかと思っておりましたが、私の認識不足でした。社会的なコスト削減と高齢者の方々の健康で充実した生活の実現という、2つの観点からこの新しい方法に取り組む価値の必要性をすでに認識し、さらに実施できる状況が整い次第、展開していく予定であるとの、極めて前向きなお話をいただきありがとうございました。大変心強く思っております。さらには、来年1月にその川島先生の記念講演と言う大変タイムリーな企画も予定していただき、重ねてお礼申し上げます。まだ、研究段階とはいえ、仙台市の脳ウェルネスプロジェクトは、高齢化社会の切り札になる可能性が高い、大変価値ある試みかと思います。是非とも、積極的に取り組んでいただき、一日も早く実施していただきますよう、要望いたします。
 以上、よろしくお願いいたします。
○議長(齋藤昌平君) 市長。
○市長(今井清一郎君) それでは、茂原議員さんから再質問をいただきましたので、お答えをさせていただきます。
 再質問の前段につきましては、教育委員会に対してでございますので、後ほど教育長からお答えを申し上げます。
 茂原議員さんには、教育問題につきまして、常日頃から極めて見識の高いご提言やご指導をいただいておりますことに、心より御礼申し上げます。茂原議員さんのおっしゃる、教育は国民の最大の関心事である、というご指摘は誠に同感でございます。特に、教育の分野でそれぞれの自治体が独自性あふれるプランを持つことが、魅力的な自治体づくりにつながり、ひいてはほかの自治体との差別化も図れるとのご指摘もまた同感でございます。
 江戸時代に三大藩校というのがあったそうでございます。会津藩の日新館、水戸藩の弘道館、薩摩藩の造士館と言われておりますが、これに長州藩の明倫館、あるいは、藩校ではありませんが、松下村塾を加えれば、幕末の主役となった傑出した人物像が揃うわけでございます。まさに、社会に必要な人材はその多くが、人づくりに明確な意志を持った地域から輩出しているという教育の重要性を物語る史実であります。
 現在、英語教育特区や小中一貫教育、また茂原議員さんが今回の一般質問で提起されました、「百ます計算」「音読」などの特徴ある教育方法が全国的に展開されております。茂原議員さんはこれらを単なる教育的な配慮だけでなく、地域の発展を促すマーケティング戦略的な発想に高めるというご指摘をなさいました。つまり、マーケティング的な発想であれば、成果や効果を明確に計算することが出来れば、それに対する投資的な取り組みも出来るのではないかというご指摘であろうと思います。今まで教育というものが数十年後に結果として現われることから、地域の投資効果という視点での見方がされていなかったように思います。その点では、実に有益かつ、斬新的な提言であると思います。
 富岡市でも、教育委員会が10年ほど前から取り組んでいる自問教育、独創教育、生き方教育という3本柱がありますが、市内14校がすべてこれに取り組むというレベルでは全国に例のない教育方法でございます。また、今年からは先生方の創意工夫を凝らした授業を支援するため、教材開発支援事業に取り組んでいるようでございます。また、生涯学習センターが取り組んでいるマタニティ・ペア・スクールも富岡市が全国に先駆けて取り組んでいる独創的な事業でございます。
 現在は、財政極めて厳しい折でありますが、米百俵の精神にありますように、本市の小・中学校教育をより充実・発展させるために、本市といたしましては、特色ある教育行政に対しては思い切った予算措置も必要かと思う次第でございます。今後とも前向きに取り組んでまいりたいと考えておりますので、どうぞよろしくご理解いただきますようお願い申し上げます。
 また、これは要望ということでお聞きしているわけですが、高齢者の健康維持の点については、私も本年度の主要目標として、健康長寿のまちづくりの研究を始めると宣言をいたしました。川島先生の方法論や、そのほかにも植物を育てることによって機能回復が出来るとか、あるいは、脳梗塞で半身不随になり、全国的に珍しいやり方で麻痺を治した方の講演を先日お聞きしまして、非常に内容が素晴らしいことから、早速研究に取りかかっているところでございます。高齢者の方々が生き生きとして育つということは、いろいろな条件があろうかと思いますが、高齢者の方が喜んで進んで取り組めるようなプロジェクトを作っていきたいと思っておりますので、これからもいろいろご指導いただきたいと思います。
 私からは、以上です。
○議長(齋藤昌平君) 教育長。
○教育長(岩井榮壽君) 命によりまして、茂原議員さんの再質問にお答えいたします。教育委員会が実践している先生方の横のつながりを作ることや、より効果を上げるための情報交換や研究ができるような機会を築くことも、富岡市の子どもたちの学力向上には大きなメリットがあるのではないかと思いますが、教育委員会としてはどのようにお考えでしょうか、とのご質問にお答えをいたします。
 現在、富岡市教育委員会におきましては、学力向上を目指して校内研修主任研修会、教務主任研修会をそれぞれ年3回行い、また、6月から10月にかけて市内の全小・中学校を対象に計画訪問を実施しております。その研修会や訪問において「確かな学力」を身に付けさせるための具体的な方策の検討・協議や優れた教材の紹介などをしております。
 また、富岡市教育研究所におきましては、教科指導班、教材開発班を中心に、学力向上に向けた研究を行っており、議員さんもご承知のとおり、毎年2月に行われる教育研究所発表会におきましては、市内小・中学校全教職員だけでなく、保護者及び一般市民にも呼びかけて研究発表会を開催し、具体的な教材や指導法を公開発表し、市内の学校へ普及しているところでございます。
 小・中学校の教科等主任会におきましては、主任会議を定期的に開催し、学力向上にむけての情報交換や研究を行っており、各学校におきましても校内研修、学年会等できめ細かな情報交換を行っており、日々授業改善にむけて努力しているところでございます。
 また、昨年度より、富岡市立西小学校は、文部科学省指定の学力向上フロンティア校としてきめ細かな指導や教材開発等を行っており、市内の学校へ、その成果を広めているところでございます。
 議員さんのおっしゃるとおり、先生方の横のつながりを作ることは大切であり、これからも効果の上がる情報交換や研究ができるよう努めてまいりたいと考えております。
 以上、申し上げて答弁といたします。
○議長(齋藤昌平君) 6番。
○6番(茂原正秀君) ご答弁ありがとうございました。市長が日頃から教育の重要性についてよくお話をされますが、私もその点では全く同じ考えでございます。国からの補助金や地方交付税の大幅な削減などで、市の予算を組むのも大変厳しい時代ではあるかと思いますが、この教育の分野につきましては、これまでどおりの深いご理解をしていただいた上で、富岡市の子どもたちのために、また、富岡市の将来のためにも、十分な予算面での配慮を続けていただくことを要望いたします。
 また、教育長のお話から、先生方が様々な研修を行い、子どもたちの学力向上に向けた努力をされていることは十分に理解できました。教育委員会には今後も先生方がきめ細かな情報交換を行えるような環境づくりを進めていただけますよう、お願いいたします。
 以上で質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。